Kocco’s blog

イギリス生活、美術教師、ロックダウン、妊娠

ロンドン到着 ー 美術学校/スタジオでの住み込み生活の始まり

車が動き出した。車窓に映る景色を眺め空港がある郊外から少しずつ都市部に近づくのがわかった。

 

(オリエルさん:以下A)—歳はいくつだっけ?

 

—26歳です、もうすぐ27歳ですが。

 

—A: じゃあちょっとコッコの年下だわ!ついこの前までコッコの部屋に住んでたスペイン人の男の子はオウペアーだったのよ。オウペアー(Aupair)というのは例えば学生とか家賃が負担になる若い世代は家賃免除の代わりに住み込みでベビーシッターのお仕事をするシステムのことで。その子は私の3人の子供の面倒を見てくれてたの。自分の生活費とかは夜にパブで働いて稼いでいたのかな。

 

———

 

私がオリエルさんを知ったのはちょうど渡英半年前のこと。ロンドンは物価が高いと聞いていたし着いたらすぐに働ける生活をしたいと思っていたから渡英前から転職サイトのIndeedなどなどチェックしていた時のこと。”Art Teacher 募集中!“思わず連絡してみた。

 

“日本からはるばるくるの!すごいじゃない!そのガッツなんだか惹かれる、よかったらうちでルームシェアしてる男の子が夏頃パートナーと住む関係で出ていくから、住み込みでのお仕事とか検討して見ない?スタジオは自分の制作のために自由に使っていいし!”

 

そんな調子でケイトスタジオのオーナーであるオリエルさんとのやりとりが始まったのだ。

エネルギッシュな彼女は西ロンドンで14年続くアートスタジオを経営している。小中高生から大人まで陶芸、ドローイング、プリントメイキングなどアートを楽しむことができる、地域のコミュニティのような存在のスタジオであることがお話やウェブサイトから伝わってきた。

ただ毎回のビデオ電話でちっちゃい息子さんたち(2歳と4歳)がギャーギャー割り込んでくるためお仕事の内容とか給与形態、シフト、細かい業務内容、スタジオの実態を把握するのに少し時間がかかったけれど、、。

 

東京でのオフィス勤務の経験とは違ったことをしたいと思っていたし、美大では陶芸を専攻し教員免許をとっていたので手でものづくりを教える仕事をしながら制作も続けられる環境があることは私にとって魅力的な環境だった。

 

———

 

そんなこんなで今、私はオリエルさんの車に乗っている、、、約半年に渡る国を超えたデジタルのやりとりが本当に実現して私の日常になっていくんだ、あの時の検索が私の人生?を変えようとしているんだ、とひしひし感じたことを覚えている。

 

スタジオについて長身のオリエルさんはガバッと私のトランクを抱え、こっちこっち!とトンネルのようなガレージを潜って奥の扉を開けた。眩しい日差しが舞い込みトロピカルなヤシの木が生い茂るなんとも緑あふれるピースフルな中庭がそこに広がっていた。何人か人の影が奥に見えるけれど挨拶はさておき、とりあえずしばらく過ごすことになるだろう自分の部屋を見て見たい、案内されるがままに二階建ての建物に入り小さな階段を上がって小さな廊下を通ってナンバー7のスカイブルーのお部屋にたどり着いた。ここからどんなストーリーが始まっていくんだろう。ワクワクしながら部屋を開けるとふわっと夏の香りが舞い込んできた。

 

f:id:Kocco:20200703060220j:plain

屋上から眺めたスタジオの中庭

 

小さなベットと机、思っていたより広々とした空間、荷物を下ろし、無事たどり着いたことを家族や友人に連絡しなきゃとか、早くもっともっと自分色に住み心地よい部屋にしていきたいなだとか次から次へと新生活にフィットしようとする自分が現れた。一方でずっと夢見ていた海外生活、大きな新生活のステップを踏み込んだことをしっかり見つめて覚えておきたいと客観的で落ち着いているもう一人の自分がいることも感じた。

 

専用のシャワールーム、共有のリビングスペース、キッチンを紹介されると屋上の可愛らしい庭園を抜けて外階段を降りて中庭に降り立ち一階のスタジオスペースへ。働くことになる陶芸スタジオを紹介されるとそこにた髭もじゃの小柄なイタリア人、ダビオを紹介された。歳も同い年。ちょうど子供向けの陶芸クラスが終わったところらしい。“今日は顔のプレートを作ったんだけど、子供達が僕のひげを土で再現してくれたよ〜”と苦笑いで作品を見せてくれた。

 

f:id:Kocco:20200703061015j:plain

 

他にも何人かとすれ違い“日本から来ました、コッコです〜!”とシンプルな自己紹介を唱えながら次々と目の前に現れる登場人物にワクワクした。レセプションに着くとオリオルさんの2歳と4歳になる息子にやっとデジタルを超えて初対面。スタジオのレセプショニストであるジャナちゃんに挨拶を。ブロンドヘアの気さくな女の人、音楽やってるんだって〜?!と興味深そうに聞かれた。彼女はジャズシンガーらしい。

 

スタジオ内にあふれているアート道具、大きな作業台に飛びっちった絵の具、壁に飾られた作品、積み重なったクリエイティブな時間の先っちょを見ている。ここはとっても面白い勤務先になりそうだと私は胸を躍らせた。

 

f:id:Kocco:20200703061023j:plain

いざ、近くの街へお散歩

f:id:Kocco:20200703060112j:plain

通りかかったお花屋さん

続く