Kocco’s blog

イギリス生活、美術教師、ロックダウン、妊娠

"I'm pregnant."

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後数時間で母に会う。妊娠、出産を決めてからずっと遠くから支えてくれていた。

 

 

妊娠が発覚した時、驚きと不安で涙が止まらなかった。

自分の身体に起きていることが信じられなかった。

 

 

両親に報告すると後日電話でお母さんは“お父さんと話しあったけれど、どんな時代になって選択肢があったとしても命は命。授かる事だって奇跡に近い。育てることが不安ならお父さんの養子にする事もできる。自分の頭でよく考えてから決めなさい”と言った。

 

 

それから私はロンドンの陶芸スタジオのオーナーに相談した。彼女はとても喜んでいた。それでも決断を迷う私に彼女は冷静なアドバイスをくれた。パートナーとの付き合い方、家族のあり方。

 

同僚のナイラにも報告。“子供が生まれると大変な事もたくさんあるし自分のキャリアとどうしようかと迷ったりもあると思うけど、びっくりするのは見える世界がカラフルになるの!その辺に植わっている植物も笑いかけてくるような気分。これは確かだわ!”

“喜んでいいんだ、、、”どう受け止めたらいいのかもわからなかった私の中で気持ちが少し軽くなるのがわかった。

 

次の日髪の毛を黒く染めた。理由はロンドンで就職活動をするから、というものだったが今となってはケジメの黒染めのような気持ちだった。その夜私はパートナーのヘンリーに会いに行った。引っ越したばかりでソファーもない殺風景な部屋の中。エアマットにポツンと二人座っていた。新しい住まいの壁色を塗り終えご満悦なヘンリー。テレビをつけ、二人で出来合いのスーパーのご飯で済ませた。

 

“話したいことがあるんだけれど、私妊娠したみたい”報告して途端プツンと何かが切れたように不安でまた涙がとまらなくなった。

どうしたらいいのか全くわからなかった。ヘンリーは“え、本当に?今僕の下半身も全身で訪ねているよ!”とお茶目に返答した。私はまた少しだけ安心した。

 

それからじわじわと冷静になっていった。二人で悶々と話し合った。

 

私のビザは2ヶ月後に切れるところまで迫っていた。2人のそれぞれの人生でしたい事を掲げあった。

ヘンリーは法律を勉強してブレないキャリアを積み直したいんだと言った、私はアーティストインレジデンスで世界を回ってからいつか東京に戻りスタジオを運営したいと思っていた。

 

でもこれは目の前の命の問題と天秤にかける事なのだろうか。自分のしたい事、自由は何かを犠牲にして得るものなのか?大切なものがあるから本気で挑める事だってあるのではないか。

 

家族を持つことについて実感なかった数日前の自分1人きりの頭の中のプランがどこかちっぽけな計画に見えてしょうがなかった。

 

自分にも宿っている命、今ここにある己の存在の誕生を決断してくれた、自分の両親にもそんな瞬間があったんだ。

 

少しでも最後の最後までこの命にできることが、方法があるなら全力で探してあげたいと思った。諦めがつかないのなら終わっていないということ。

 

そして今まで二人がそれぞれの人生の先に思い描いていた物語、予定が大きく変化しようとも私たちは力を合わせてさらに良く、さらに面白くしていける、そんな底力がみなぎってきた。